(実話)一寸先も見えない海霧の中 韓国映画「海にかかる霧」【感想・評価・レビュー】

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あの日、海の上で起こったことは、誰にも話してはならない。

2014年公開の韓国映画『海にかかる霧』をご紹介します!

2001年に起きたテチャン号事件をもとに映画化した作品で、その演技力でたくさんの受賞歴を持ち、監督としても活躍するベテラン俳優キム・ユンソクが主演を務めています。

また、本作で映画デビューした元東方神起で元JYJのパク・ユチョンが、多数の映画賞新人賞を受賞しました。初々しさの中にもベテランに負けない演技力で魅せてくれます。

私たち日本人にはあまりなじみがないと思う人が多いかもしれませんが、実際に起きた事件で、世界的な問題でもある密航のお話です。

※なるべくネタバレしないよう面白さだけを書いていきます。

それでは最後までお付き合いください!

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【あらすじ】

漁船チョンジン号の船長カン・チョルジュは不漁に苦しみ、漁船の修理もままならないほどに困窮していました。優しいワケあり機関長ワノ、船長の命令に黙って従う甲板長ホヨン、お金がすべてのギョング、欲求第一のチャンウク、新人乗組員のドンシクの5人の乗組員のため、金策に走り回るカン船長。一時はヨス(麗水)の海を牛耳ったチョンジン号は、今や減隻事業の対象。

そんな中、追い込まれたカン船長は危険な仕事に手を出します。沖合で中国船と合流し、密航者たちを陸へと運ぶという闇ルートの仕事です。一発逆転の大漁を夢見て沖に出たチョンジン号は、魚ではなく、人を乗せることに・・・。

荒れた沖合で中国船からチョンジン号に飛び移る密航者たち。しかし一人の若い女性ホンメが海に転落。それを見たドンシクは海に飛び込み、ホンメを救出。ギョングやチャンウクからホンメを守るため、船の機関室に隠れさせます。

そこへ現れる海上警察。密航者たちを魚艙(ぎょそう、漁獲物入れ)に隠し、ワイロを渡して何とかやり過ごしますが・・・。

『海にかかる霧』予告編

【みどころ】

みんな狂ってる!?

密入国者に女性がいたことで不機嫌になるカン船長。苦肉の策とはいえ、密入国に手を出した時点ですでに狂っていたのかもしれません。

密入国者を死なせた上、処理したことで、優しい機関長ワノが正気を失います。独り言を話し始め、証拠隠滅のために燃やした密入国者の遺品を拾い集めます。「家族に消息を知らせる」と言い、カン船長に殴り殺され、海に放り込まれます。

その後、機関室に隠れるホンメが見つかってしまいます。そのホンメの処理をカン船長から指示された甲板長ホヨンは、ドンシクともみ合いになり、飛び出た鉄線が首に刺さって死んでしまいます。

執拗にホンメを追い回すチャンウクと、殴られて逆上したギョングと乱闘になり、魚艙(ぎょそう、漁獲物入れ)に落とされたドンシクは、そこでホンメを見つけます。その後、逆にチャンウクとギョングを魚艙に閉じ込め、海の上に逃げようとしたところ、今度はカン船長が襲い掛かってきます。

いやぁ~みんな狂ってます。その中でも特にチャンウクには殺意がわきました。女とヤることしか考えてないクソ男です。異常な執着に嫌悪感という言葉じゃ足りないくらい気持ち悪かった・・・。

荒れ狂う海の恐怖

舞台は海の上。迫りくる高波と冷たく降りしきる雨に加え、一寸先も見えないほどの霧。そんな中、海に落ちたホンメを助けるために飛び込むドンシクですが、現実的ではないですね。そんなことすれば、まず2人とも助かりません。ストーリーを盛り上げるためのシーンなので演出として見ておきましょう。

本当の自然の恐ろしさを映像に見るのはクライマックスです。ドンシクが船に穴を開けたことで、少しずつ浸水し、どんどん沈んでいきます。それでも諦めない船長ですが、落としたイカリのロープに足を巻き取られ、船のヘリにつかまります。船の現状を目にした船長は、一瞬にして海に飲み込まれます。

このシーンは本当に恐怖を感じました。それまで人間の恐ろしさを見ていましたが、一瞬にしてそれを超える恐怖に襲われました。

第7テチャン号事件

韓国に密入国しようとした中国人60人のうち、25人が船内で窒息死し、船員らがこれらの死体を海に捨てた事件をモデルにしたこの作品。

8人乗りのテチャン号に、密航者を含め68名が乗っていました。海上警察の取り締まりにあい、密航者たちを2つに分け、とれた漁獲物をいれる船倉に25人、水槽タンクに35人を隠しました。船長の指示で網倉庫の出口を密閉した後、重さ1トンの漁具などで覆いました。しかし、通気口がない密閉状態の船倉にいた25人は、およそ3時間後に窒息死したとされています。水槽タンクの35人は、小さな通気口があったのでかろうじて生き延びましたが、「扉を開けるのがあと5分遅かったら死んでいただろう」と、のちに生存者が語っています。

食事を与えようと船員たちが扉を開け、25人の死亡を確認。生存した密航者に手伝わせて遺体を引き上げ、甲板に置いて布団などで隠しておきました。生存者を別の船舶へ移した後、テチャン号はまた沖へ向かい、遺体を海へ投げ捨てました。

生存者が食料を求めて立ち寄った民家の住民の通報により、事件が発覚。船長ほか船員8名は重過失致死と死体遺棄の罪状で逮捕されました。

【登場人物(キャスト)】

カン・チョルジュ(キム・ユンシク)・・・船長。船に執着。

ドンシク(キム・ユチョン)・・・新人船員。純朴。

ホンメ(ハン・イェリ)・・・密航者の若い女性。

ワノ(ムン・ソングン)・・・機関長。優しい。

ホヨン(キム・サンホ)・・・甲板長。船長の右腕的存在。

ギョング(ユ・スンモク)・・・船員。お金に執着。

チャンウク(イ・ヒジュン)・・・船員。女に執着。

【感想・評価】

島育ちの私は海の怖さをわかっているつもりでしたが、映像で見て恐怖心が強まりました。「沈む」ではなく、「飲み込まれる」。この作品を見ればこの意味がわかるでしょう。

過失とはいえ、たくさんの人を死なせてしまったことを隠すため、さらに凶行に及ぶ。映像にはあまり映されませんが、その"音"に、思わず耳を塞いでしまうほどでした。

「そして誰もいなくなった」的なものを途中感じましたが、ドンシクとホンメは助かったので安堵しました。でもドンシクが目を覚ました時にはホンメはいなくなっていて・・・6年後、再会かと思いきや、ドンシクの表情から再会を喜ぶ様子は見られませんでした。むしろ悲しいような切ないような・・・。やはりあの事件を引きずっているのでしょうか?

人の醜さ、海の恐ろしさに、言葉を失った『海にかかる霧』はオススメ度「★★★」

次の作品をお探しの方には「白夜行~白い闇の中を歩く」がオススメ!

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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