則天武后の隠密機関 中国史劇『晩媚(ばんび)と影~紅きロマンス~』感想・評価・レビュー

Amazonプライム

中国史劇 晩媚と影/DVD-BOX

女刺客と護衛の禁じられた愛

2018年の中国史劇『晩媚(ばんび)と影~紅きロマンス~』をご紹介します!

若手の演技派俳優たちが好演し、“2018年最も美しく切ない物語”と称され、2019年に日本でも放送されました。

ヒロイン晩媚/蘇七雪(そ・しちせつ)役にリー・イートン、ヒロインを支える”影”長安(ちょうあん)役にチュー・チューシアオ、その他にもワン・ドゥオ、リー・ズーフォンなど、注目の若手俳優たちが出演されています。

オープニングや、作中の回想シーンで使われている、水墨画のアニメーションが非常に美しく、独特の世界観にも注目!

中国ドラマでは中国国内でも吹替が多い中、メインの晩媚と長安の声はキャスト本人たちが担当。広大な中国では方言も多く、テレビでの放送は全国民に伝えるために標準語でなければならない規定があるのです。日本でも方言はありますが、比じゃないということですね。

それでは最後までお付き合いください!

※映画・ドラマを見るなら作品数が多いU-NEXTがオススメ!




『晩媚と影~紅きロマンス~』のあらすじ

父と弟と暮らす主人公の蘇七雪(そ・しちせつ)。しかし父から楼閣(ろうかく、遊郭)に売られ、必死に逃げ出そうとしますが、大騒ぎしていた梁(りょう)の武官黄勇(こう・ゆう)の前の舞台に…。

華美な舞姫たちではなく、素朴な蘇七雪を気に入った黄勇に指名され、襲い掛かられますが、傘をさした美しい女性が入ってきて黄勇を殺してしまいます。

蘇七雪が助けを求めると、日没までに町の西にある墓場まで来るよう言われます。決死の覚悟で脱出し、追手から逃げる途中で落馬して気を失ってしまいます。雨にうたれて意識を取り戻した蘇七雪は、約束の時間が過ぎていても乱墳崗を目指して歩き始めます。

しかし輿が襲われているところを見て隠れていると、暗闇の中の獣の唸り声に怯え、崖から落ちてしまいます。必死に崖をよじ登り、翌朝、月影(げつえい)に連れられて姽嫿城(きかくじょう)へ…。

【予告編】晩媚と影~紅きロマンス~

みどころ

父に身売りされた少女

父と弟と苦しい生活を送っていた主人公の蘇七雪(そ・しちせつ)。死体埋葬の日雇いの仕事を終えて帰ると、酒楼”鼎香閣(ていこうかく)”に薬草を持っていくよう言われます。しかし父が売ったのは薬草ではなく娘である七雪。薬草の中身は藁で、ほんの少しの粟(あわ)と引き換えに娘を売ったのです。

処女の血は長寿薬として高く売れるらしく、気を失っていた七雪が目を覚ますと切り付けられた右腕から血を取られていました。

何とか逃げ出すも、武官たちの酒宴の舞台に飛び出してしまい、校尉の黄勇(こう・ゆう)に気に入られて襲われます。しかしそこへ傘をさした美女が現れ、黄勇は殺されてしまいます。

怯えながらも助けを求めると、日没までに約束の場所へ来たら姽嫿城(きかくじょう)へ連れて行ってくれると言います。

チャンスは一度きり。七雪は鼎香閣を抜け出してたどり着けるのでしょうか…?

姽嫿城(きかくじょう)

則天武后(そくてんぶこう)の隠密機関として発足した女性の暗殺組織の本拠地。厳しい掟があり、破った者には残忍な懲罰が待っています。

城主の姹蘿(たら)から名を授かり、”影”と呼ばれる男性の護衛を選んで、主に人を殺める任務をこなしていきます。一度入ったら抜け出すことはできず、死んでも骸さえ残らない場所で、任務に失敗すれば死ぬか拷問で死ぬか…結果命はないのです。

地殺(ちさつ)→天殺(てんさつ)→絶殺(ぜっさつ)と階級があり、上にいくにつれて任務は難しくなり、人数も減っていき、絶殺は2名しかいません。

地殺になると血蠱(けっこ)を養うための白い傘を与えられ、人を殺めるごとに血を吸って紅くなり、”血湧金蓮(ちゆうきんれん)”という金色の花が浮かび上がります。1人殺すごとに1つ咲き、10番目の花にいる血蠱が体内に入れば天殺に昇格。

”影”は常に主と共に行動し、主の許しがないと、自分の傷の手当もできません。”影”を変えていいのは”影”が死んだ時だけで、恋愛関係になったら主は殺され、”影”は死ぬより残酷な罰が与えられます。池に沈められた主と、背中の皮をはがれた”影”も…。

拷問がヤバい。熱い鉄の型に両足を押し込まれる、無数の細長い針で体中を刺される、細い紐で全身を縛られる、四肢切断など…。

昔の中国は刑罰が厳しいというか残酷。夢に出そう…。

主と影の禁じられた愛

女刺客たちは、常に行動を共にする”影”と呼ばれる男性の護衛を選びます。生活も任務も共にし、”影”を変えていいのは”影”が死んだときだけ。逆に”影”は、主が死ねば7日以内に新しい主を見つけなければいけません。そして2人目の主が任務に失敗すれば命はありません。

主をなくし、期限当日だった長安(ちょうあん)を選んだ晩媚(ばんび)。美貌以外は何もない晩媚のために、長安は様々な教養を身につけさせます。美容と健康を気遣った食事作りからお肌や髪のケアまで!

毒に侵された自分のために命がけで助けを乞うた晩媚に、長安は少しずつ惹かれていきます。しかし主と影は恋愛関係になってはいけないという厳しい掟のため、何があっても守ると言う以外に想いを伝えることはありませんでした。

任務を遂行していく中で、長安が晩媚を裏切るような事をし、理由を聞こうにも冷たくあしらわれ、”影”を辞めるとまで言われてしまいます。そして絶殺であり、身売りされた蘇七雪だった頃の晩媚を姽嫿城(きかくじょう)へと誘った流光(りゅうこう)の”影”に…。

のちに試練に耐えて晩媚の”影”に戻り、姽嫿城を一緒に出ようとしますが…。



残念なところ

美しい映像や色鮮やかな衣装に見とれる中、時たまCG感満載の背景が…。姽嫿城(きかくじょう)の周辺とかね。セットや小物など細部まで美しいため、変に目立ってしまいました。

中国史劇と言えば華美、きらびやか、豪華絢爛。特にファンタジー要素を含む作品であれば、幻想的な背景があるものです。残念ながら悪目立ちしてしまいました。

ただ、魅せ方はやはり上手い。戦闘シーンのスローになるタイミングや、水(水滴)、花びらの使い方は秀逸!さすがの中国といったところ。

色使い、水使い、花使いに関しては右に出るものなしですね。

登場人物

晩媚(ばんび)/蘇七雪(そ・しちせつ)・・・父から遊郭に売られ、そこで出会った流光(りゅうこう)という女性に助けを求め、姽嫿城(きかくじょう)へ。美貌と知恵で暗殺を行う刺客“地殺”となるが、人を殺し続けることに耐えられず苦悩。情に厚く、任務のターゲットであっても同情心を見せる。

長安(ちょうあん)・・・常に主を支える”影”と呼ばれる晩媚(ばんび)の護衛。前の主人が任務をしくじって死に、7日以内に主人を見つけなければ殺されるというところで晩媚に選ばれる。晩媚の美を磨き、琴、踊り、書画(水墨画)、書道、囲碁、読心術を叩き込む。実は姹蘿(たら)への敵討ちのために姽嫿城へ来た。本人は知らなかったが、実は唐(とう)王室の子孫で皇帝になる身分を持つ高貴な人。

流光(りゅうこう)・・・女刺客。絶殺。遊郭で蘇七雪に助けを求められ、姽嫿城へ招く。

若様/寧王(ねいおう)李嗣源(り・しげん)・・・視覚障害を持っているがのちに快復。後唐の王族で姽嫿城の元城主の息子。情に厚い晩媚に惹かれていく。

月影(げつえい)・・・李嗣源の配下。絶殺。蘇七雪を姽嫿城に連れてきた。蠱毒使い。

晩香(ばんこう)・・・晩媚をライバル視。楼閣に売られた蘇七雪が飛び出した舞台は、晩香が刺客になるための最終試験だったため、邪魔されたと恨んでいる。

姹蘿(たら)・・・姽嫿城の城主。若様を敵視し、晩媚を嫌っている。目を合わせることで幻術にかける催眠幻殺(げんさつ)を使う。

刑風(けいほう)・・・姹蘿の影。刑堂(賞罰を決めるところ)の堂主。

晋王(しんおう)李存勖(り・そんきょく)・・・皇帝。若様の異母弟。若様の目が本当に見えていないか確かめるため、越軽涯と組んで、若様を育てた乳母を目の前で釜茹でし、その煮汁を魚の煮汁と偽って若様に飲ませる。

藍禾(らんか)・・・姽嫿城の元城主で若様の母。行方知れず。

越軽涯(えつ・けいがい)・・・血蓮教(けつれんきょう)の教祖。若様と敵対し、姹蘿に近づく。摘星楼(てきせいろう)に諜報組織を置いている。

藍若(らんじゃく)・・・越軽涯の養子で、血蓮教の教祖代理。

阮娘(げんじょう)・・・摘星楼の女将。長安が拾われた謝(シャ)家の娘。血蓮教の分布図を持っているため、晩媚と長安のターゲットとなるが…。

感想・評価・レビュー

何度見ても中国史劇は残酷。岩穴の中にいた罰を受けた女の人たちもそうだし、序盤で障子に映った背中の皮膚をはがれる”影”の影もそう。本当に目が見えないか確かめるために、目の前で育てた乳母を釜茹でし、若様にそのスープを飲ませるとか鳥肌もの。

皇帝という絶対的な君主がいて、誰ひとり逆らうことができない。そんなイメージです。本作の場合は、姹蘿と若様の2強という感じ。昔の中国は男尊女卑がひどいと思っていたので、男女逆転は新しい。女性の刺客は男性にない”女”を使えますからね。

そして水墨画のアニメーションがまた美しい!白い背景に墨の黒一色で描かれ、女性の口の赤色が際立ってとてもいい!

「本人に聞け!」「隠さず話せ!」のオンパレード。そうすればこじれずに済むことばかり。晩媚と長安の間なら、2人で話し合って困ることなんてないでしょ。

ハッピーエンドを期待しましたが、そこはやっぱり裏切る中国史劇。強く賢く、常にそばにいて自分を守ってくれる、しかもイケメンがいたらそりゃあもうね!惚れないわけがないよね!

壮大な夫婦喧嘩に巻き込まれた『晩媚と影~紅きロマンス』はオススメ度「★★★★」

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

※映画・ドラマを見るなら作品数が多いU-NEXTがオススメ!




タイトルとURLをコピーしました