嘘。それは差別から逃げ出す手段だった。映画「サーミの血」【感想・評価・レビュー】

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映画 サーミの血/DVD

全てを捨てて手に入れた自由。本当の幸せとは・・・。

今回観てきた作品は少数民族への差別を描いたスウェーデン、ノルウェー、デンマークの問題作「サーミの血」。パッケージの勝手なイメージから、ホラー要素を含む作品だと思ってしまいました。

しかし見始めると少数民族への迫害と思えるほどの差別と、その運命に立ち向かう一人の少女を描いた物語で、見終わった後深く考えさせられる内容でした。

この作品に興味を持った方は、「差別」というものをどう考えていますか?

人種差別・言語差別・女性差別など、多くの社会問題を生み出している事は間違いありません。日本でも職業に対する差別や家庭環境、方言など言語の違いで差別してしまっている人も少なからずいるでしょう。

「サーミの血」は、ラップ人であるだけで文明に適応できないと決めつけられ、民族自体を差別化されていた1930年代を描いた作品です。

この作品を観てどの部分に心動かされ、どう考えるのかいろんな方に聞いてみたいものです。

それでは「サーミの血」の面白さを感想と共にレビューしていきますのでお付き合いください。

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かんたんなストーリー紹介!

スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族サーミ人。1930年代当時、スウェーデン人から厳しい差別を受けていた。

サーミ人の少女エレ・マリャは妹のニェンナと共に寄宿学校に通っている。そこではサーミ語は禁止され、サーミ人を調べている研究員の研究材料とされていた。

優秀な成績のエレ・マリャは進学を望んだが、限られた教育しか受けられていない事を知り、「あなたたちの脳は文明に適応できない。」と告げられる。

トナカイを飼い、テントで暮らす生活を抜け出したいと思っていたエレ・マリャは、ある日スウェーデン人のふりをしてパーティー会場に忍び込んだ。

そこで出会った都会的な少年ニクラスと恋に落ち、エレ・マリャは自由を求めて街へと向かった・・・。

映画『サーミの血』予告編

この作品の見どころ紹介!

自分の未来を切り開いていくエレ・マリャ

主人公の少女エレ・マリャはサーミ人として生まれたという理由だけで、スウェーデン人から様々な差別を受けていきます。

道を歩けば不潔だ、臭いだの罵声を浴びせられ、学校では骨相学に基づいて劣悪な民族だと決めつけられていました。

進学も許されず、少数民族として生きていく事以外を否定されているような現状から抜け出そうと、エレ・マリャは必死に行動していきます。

自分たちを差別しているスウェーデン人になりすまし、自由な未来を手に入れるため、自分が歩んできた人生を嘘で固めていきます。

そんな彼女の行動力や覚悟、生命力は、観ている人に望む未来を手に入れるため、宿命に抗おうとする強い意志を理解させてくれました。

今の私たちにもより良い未来を手に入れるため、現状を打破したいと考えてる方も多いでしょう。

まだ行動できていない方は、作品の中でエレ・マリャの覚悟と決意、行動力を観ていただきたい。

人の心が生み出していく差別

生まれや育った場所で差別されてしまっているサーミ人の物語ですが、その差別という考えはどのようにして生まれるのでしょうか?

「サーミの血」では、知らない事から生まれる差別と、知りすぎているからこそ生まれる差別の心理がしっかりと伝わってきます。

そして自分の立ち位置が変わると、その差別的な心はどう変わっていくのか・・・。とても深い人間の心理がエレ・マリャを通して伝わってきました。

日本でもイジメという差別的な行動が無くなることはありません。例えばですが、イジメられっ子が転校を機に、いじめっ子グループに入ったらどう行動していくのでしょうか?

イジメられっ子を守ろうとするのか、イジメに加わるのか・・・。

その答えはあなたがどれだけ痛みを理解できるか、行動できるかで変わってくるので、他の人と同じ選択肢に辿り着けるとは限らないでしょう。

ただ一つ頭で理解しているのは、いじめや差別はなくしたい。その答えに共感していただける方は多いと思います。

話は少し逸れましたが、何百年、何千年も昔から存在し続ける差別という人間の本質が色濃く表現されている作品です。

先ほどの質問を少しでも考えていただけたのなら、この作品のメッセージを汲み取れると思うので観ていただきたい。

ファーストシーンに込められたメッセージ

この作品は1人の老婆が息子たちと車で妹の葬式に向かうシーンから始まります。サーミ人は嘘つきで物取りだと悪意のある発言をしながら、サーミ人の音楽を耳障りな音と言い放っています。

この非常に差別的な態度を示す女性は誰なのでしょうか?

先ほど未来を切り開いていったと紹介したエレ・マリャです。実はこのシーン、彼女の言動や行動にこの作品にの深いメッセージが詰め込まれているのです。

生まれ故郷を離れてスウェーデン人だと偽り、嘘で固めた人生を歩んできたエレ・マリャ。そして多くの人に見送られながら人生を全うした妹のニェンナ。

エレ・マリャが帰ってきた古郷では、同じ血が流れるサーミ人から冷たい視線を投げかけられています。

差別というものがどのように生まれ、その思想はどのように植え付けられていくのか。人生の終焉が近づいてきているエレ・マリャは、生まれ育った風景を見て何を思ったのか、全てがそのシーンに込められています。

このメッセージには物語を最後まで観て初めて伝わってくる部分なので、この記事を読んだからといって受け取れるものではないので安心して本作を観ていただきたい。

そして最後まで観終わった後、出来れば最初の10分間をまた見返していただきたい。(エレ・マリャがサーミ人に悪意のある発言をした本当の意味を理解出来ると思います。)



まとめ・評価

少数の先住民族への差別的な問題が込められた作品「サーミの血」は、運命に抗う少女の強さと考えさせられる内容が込められた名作です。

最後まで観終わった後、最初に老婆が差別的な発言をしていた事を思い出して、初めから見返したことでこの作品の深いメッセージ性に気付くことが出来ました。

未来は決められているのではなく、自分がどのように行動するかで大きく変わると思わせてくれる内容です。

そして未来を変えることが本当に幸せなことかは、人生の終わりに近づいた時にしかわからないのかもしれません。

年老いて帰ってきた故郷で自分が生まれ育った風景を見渡した時、彼女がどう感じたかはこのストーリーをどう捉えるかで変わるでしょう。

なたがこの差別という問題に直面したエレ・マリャの生き方を観て、彼女の心の内をどう汲み取るのか非常に興味深いです。

とても印象に残る作品なので、興味を持った方はぜひ観ていただきたい作品です。

最後に評価ですが、差別という問題と向き合いながらも、人生という深い内容が込められたストーリーは多くのメッセージを観ている人に届けてくれる作品ですが、序盤の深いメッセージは作品を一度観ないとわかりづらいので「オススメ度★★★★」で締めたいと思います。

お付き合いいただきありがとうございました。

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